【みとちゃ農園・栢下裕規(かやした ゆうき)さん】
生産地:奈良県山添村
代表するお茶の種類:天日干し釜炒り茶、和紅茶
農法:自然農法
一言で表すと「己に素直な山人」
「大きくなったら何になりたい?」
「消防士さん!!」
ひと昔前までは、こんな親子の会話はごく自然なものに聞こえた。
私の子どもの頃もそうだった。
今回ご紹介する水戸茶農園の栢下さんは、偶然にも同い年。
同じ時間を生きてきたからこそ、
考えさせられることや思うことがあり、
ついつい質問攻めにしてしまった。
なんせ、私の周りには「就農」をした人はただの一人も知らなかったからだ。
栢下さんは、今でこそ品評会で受賞するほどの美味しいお茶を作っているが、
お茶作りがどうしてもしたかったわけでは無いと淡々と話してくれた。
「では農業がしたかったの?」
という問いにも、
「別に農業がしたかったわけでもない」
との返答。
「???」
「山里で暮らしたかった」
「!!!!」
そう、栢下さんは、『自分の生き方・生きるスタイル』を明確にもっていたのだ。
職業や肩書がイコールその人を映し出していたかのような時代はとっくに終わりを告げて、
仕事を掛け持ちしたり、フリーランスで活躍する方が一気に増えた近年を先取するかのような
彼の思考回路に私はハッとさせられた。
仕事大好きでほとんどの時間を仕事に費やし、怒涛のように突っ走ってきた若き日の自分には到底考えも及ばなかったことだ。
そう、
彼は
自分の命をどのように使っていくか?
つまり、
『自分自身がどのような生き方をしたいのか?』
がすべての出発点だったのだ。
もともとは人が住む環境や日本の枯山水のような庭のデザインに興味があり、
大学では住環境デザイン学科に進んだ。
その授業の一つが、彼の今後の生き方に大きな影響を与えた。
KJ法による里山のフィードバックだった。
KJ法とは、データをカードに記述し、カードをグループごとにまとめて、図解し、論文等にまとめていく。
という方法のことで、
里山に実際に入り、見たり感じたことを学生がシェアし、まとめていくという授業だった。
昔から変わらない段々畑や、地形に合わせて作った棚田から、
自然に抗わず、自然とともに寄り添うように暮らす里山の人たちの生き方を目の当たりにした。
そのうちに、
『何気ない生活の中にこそ人生の喜びや幸せがある』
と強く実感したという。
当時の彼は、
今、自分がお茶作りをしているとは思ってもみなかっただろう。
次回は就農・お茶つくりへの道のりをお話します♪